Q&A | Twitterを語る
Twitterを語る: イングランドサッカー協会Jim Lucasさん
月に一度の「Twitterを語る」では、Twitterで大きな話題を集めた特に興味深いパブリッシャーやソーシャルメディアのプロフェッショナルと、その舞台裏に迫ります。今月は、イングランドサッカー協会(イングランド代表とイングランド女子代表を含む)のコマーシャル&マーケティング理事会マネージングエディターであるJim Lucasさんにお話を伺います。
イングランドサッカー協会(@FA)について簡単に教えてください。フォロワーが集まる理由は何でしょうか?
私はFAに在籍して4年ほどになりますが、誰もが特に驚くのは、FAがいかに多種多様な資産を所有しているか、また、それに加えていかに多くのコンテンツチャンネルを運営、所有しているかに気付いたときです。
私が着任する前のイングランドサッカー協会では、@FAというアカウントでの活動がほとんどでした。今もこの名前で活動を続けていますが、当時はイングランド代表、FAカップ、女子スーパーリーグなど、幅広い分野の情報をカバーし、1つのチャンネルでさまざまなオーディエンスに情報を発信しようとしていました。
私の着任前もそうでしたが、着任後はより一層、適切な対象者に、適切なタイミング、適切なトーンなどで確実にメッセージを発信できるよう、チャンネルのポートフォリオを細かく分類するようになりました。そういうわけで、私のチームが運用しているTwitterアカウントは、@FA、@England(イングランド代表)、@Lionesses(イングランド女子代表)、@EmiratesFACup(FAカップ)、@BarclaysFAWSL(FA女子スーパーリーグ)、@FAWC_(FA女子選手権)、@TheWomensFACup(女子FAカップ)の7つとなっています。
FAに加わった当初は自分ひとりで多くのチャンネルを運営していましたが、今では優秀な人材を雇ったり代理店を採用したりして、ほぼ専任のコミュニティマネージャーとして各チャンネルの運営を任せられるようになりました。そのおかげで個々のアカウントのターゲット層に対して適切なトーンを身に付け、理解を深めることができました。
2020年におけるソーシャルメディア管理者のあり方についてお聞かせください。
まず、ソーシャルメディアは個人、利用者、ファンにとって特定のブランドやチームとの最初のタッチポイントであり、ブランドの最前線であることがほとんどだと思います。そのため、現代のソーシャルメディア管理者に求められるのは、話し方からライフスタイルまで、常にそのブランドに集中することだと思います。また、自分が話しかけようとしているオーディエンスを十分に理解することも重要です。
9時に出社してTweetDeckを起動し、何か面白いことを書き込んで、終業時間になったら帰宅するといったものではありません。オーディエンスの温度、ビジネス自体の温度、伝えるべきことや伝えたいこと、それに対する人々の声を絶えず観察し、最終的にそれに反応すること。個々のオーディエンスに返信するとか、オーディエンスが興味を持つようなコンテンツを発信するとかですね。ひたすらその繰り返しです。
ソーシャルメディアに携わってどのくらいになりますか?その間、業界はどのように変わりましたか?
2009年に大学を出て、多くのジャーナリズム専攻の学生たちと同じように地元の新聞社に最初に就職しました。入社してすぐにスポーツ記者として働きましたが、比較的若かったこともあり、やがて自分の記事が週1回しか掲載されないことを不満に思い始めました。木曜日発行の週刊紙で、土曜日に開催されるサッカーの試合を取り上げることに私は違和感を覚えました。サッカーの試合が終わって5、6日もたってから言えることは限られているからです。
その新聞社はウェブでの知名度があまり高くなかったため、私はその改善に取り組みました。その最初の仕事で私が特に力を注いだのは、ソーシャルメディアでの新聞社の存在感を高めること、特にサッカーチームの報道に注力することでした。ちょうどその頃、ジャーナリストが読者とコミュニケーションをとり、自分たちの活動を宣伝し、ファンを増やすためのチャンネルとしてTwitterが注目されはじめていました。
2016年にイングランドサッカー協会に籍を置く前のことですが、2012年にサウサンプトンFCに移って広報室に勤務していました。当時のサッカークラブや組織には、さまざまな肩書きを持つ人たちがたくさんいて、当時そこには広報担当者、Webサイト運営管理者、ソーシャルメディア担当者などが集まっていました。
Twitterとの関係についてお話しいただけますか?
よりアクティブなチャンネルを持つ組織に移ってからは、私個人のTwitterアカウントでの発言はやや減ったように感じます。それでも私にとってTwitterは朝起きて最初に開くアプリであり、夜にも最後に見るアプリという意味で、とてもわかりやすい関係です。ニュース速報を見るときも、世論を参考にするときも、まずTwitterをチェックします。
Twitterでは会話が非常に重要です。どの会話や返信に対して関わるのか、どのように決めていますか?
たとえば Lionessesなどのアカウントから、中傷する人やコミュニティに無関係な人と関わり合うのは意味がないと思います。自分たちについて良いことしか言わない人とだけ関わりを持てとは言いません。建設的な会話にはいつでも参加する姿勢でいたいものです。しかし私にとっては、返信する相手や参加しようとしている会話について多少なりとも情報を集めることが重要です。
人と話すこと、人の認識を変えることは、私にとって非常に前向きなことです。一般的な面でも職業上からも、人々の認識を変えることは大きなモチベーションの1つであり、Twitterはそれをごく短期間で簡単に実現できる場所です。
それでは、いくつか簡単な質問にご回答ください。
親しみを込めて他のアカウントを茶化すことはありますか?それについてはこれまでのキャリアを通じていろいろと考えてきましたが、自分のアカウントの表現スタイルに合っていて、もしそれが裏目に出ても対処する心構えがあれば良いと思います。
複数のハッシュタグを付けることはありますか?
私の哲学は、というと大げさかもしれませんが、基本的にハッシュタグはツイート本文の言葉として使うものであって、単に見つけてもらいやすくする目的で文末に付け足すものではありません。
言葉を絵文字で代用することはありますか?
繰り返しになりますが、それがアカウントの表現スタイルに合っているなら使っても良いし、合っていなければ使わないほうが良いでしょう。たとえば、@Lionessesなら賛成、@FAなら反対です。
自分が関わりたかったと思うほど秀逸なツイートについて教えてください。
私がサウサンプトンFCを離れたのは2016年のことですが、自分の子供のように思っていたので、いつも気にかけていました。たしか私が辞めた後の夏頃だったでしょうか、その頃のサッカークラブには、新しい選手と契約するときに非常に手の込んだ発表をするという奇妙な風潮がありました。
各クラブが互いに出し抜こうとして、次第に映画のような、派手な演出がエスカレートする中で、サウサンプトンはほとんどパロディのような発表をツイートして、その流れを完全に断ち切ったのです。これはサッカーのメディア部門が互いに出し抜こうとすることに対して、多くのサッカーファンが感じ始めていたことを代弁するもので、私にとってもそうでした。サウサンプトンが登場し、風船を割るようにあの奇妙な空気感を完全に消し去ったとき、私は「すごいな、自分もその場にいて、あの風船を割る人として加わりたかった」と思いました。
現在フォローすべきアカウントを教えてください。
個人的には「Football Cliches」というアカウントを自分のタイムラインでよく見ています。これは私たちの業界をからかっているようで思わず笑ってしまいます。サッカー業界はたまに堅苦しすぎることがありますが、このアカウントは毎回その点を的確に突いてきます。
同じような路線でJonny Sharplesさんという方がいます。ジャーナリストかどうかわかりませんが、サッカークラブの実態を的確に描写して、この業界がいかにおかしいかを教えてくれる非常に優れた業界解説者です。Sharplesさんはここ数年、メンタルヘルスを推進する素晴らしい活動も行っています。なかなか話題にしづらい悩みを抱えているオーディエンスと関わり合うにはとても良い方法だと思います。
インタビューの最後の質問になりました。下書きフォルダに残っているツイートがあれば教えてください。
私の直感ですが、もし自分の下書きフォルダを覗いたら、途中まで書いたものの、違うアカウントにログインしていることに気付いて結局中断してしまったツイートが見つかるでしょう。7つの異なるアカウントに加えて私個人のアカウントもあるため、利用しながら必ずどこかでそういう経験をするものだと思います。
注目のコレクション
Twitterを語る
「Twitterを語る」コレクションでは、Twitterで際立ったツイートをしたり、大きな話題を集めたりした特に興味深いパブリッシャーやソーシャルメディアのプロフェッショナルと、その舞台裏に迫ります。