Q&A | Twitterを語る

Twitterを語る: Team GBのEd Langfordさん

月に一度の「Twitterを語る」では、Twitterで際立ったツイートをしたり、大きな話題を集めたりした特に興味深いパブリッシャーやソーシャルメディアのプロフェッショナルと、その舞台裏に迫ります。今月はオリンピックのイギリス選手団、Team GBのデジタルコミュニケーションマネージャーであるEd Langfordさんにお話しいただきます。

 

ご自身について簡単に教えてください。@TeamGB にフォロワーが集まる理由は何でしょうか?
Team GBはオリンピック選手団なので、皆さんが毎週・毎月観戦するようなスポーツのアカウントとは違います。このアカウントは、2012年のロンドン大会と、2010年代のソーシャルメディア普及によって大きく成長しました。ロンドン大会はチームの各種ソーシャルチャンネル、特にTwitterで大きな転機となり、ますます勢いをつけています。その一員として全英で愛されるブランドに携われるのは大変光栄なことです。 私たちはつねづね、「NHS(イギリスの公的保健医療制度)に次いで国内で2番目に愛されているブランド」という統計情報を利用していますが、今年はとりわけ、銀メダルにあたる2位になったことを大変嬉しく思っています。

背景テクスチャ。

ソーシャルメディアに携わってどのくらいになりますか?その間、業界はどのように変わりましたか?
大学を卒業して数年間、リテールテック企業の採用部門で正規の仕事に就きましたが、長くは続きませんでした。そこで初心に戻って、スポーツメディアの基礎となるスポーツジャーナリズムの学位を取得しました。その過程でTeam GBの仕事を紹介され、2014年の冬季オリンピック期間中、ソーシャルメディアに携わることになりました。それからずっとこの仕事を続けています。 最初はデジタルとコミュニケーションの複合的な業務を担当していましたが、現在は、デジタルフィード全体におけるコンテンツのアウトプットすべてを担当しています。ソーシャルメディア、ウェブサイト、アプリ、その他すべてのファン向けのコンテンツを、私と私のチームが世に出しています。

変化については計り知れないほど甚大です。以前ソチを訪れたとき、カーリングの試合中に、ただ座ってスコアをツイートしていたことを思い出します。今では7年前でさえ比較にならないほど進化が早く、まるで別の業界のようです。2012年ロンドン大会あたりから、スポーツ関連のソーシャルメディアが本格的にブームになった後のことです。自分では使い方がよくわからないので、インターンをソーシャルメディア管理者にしてアカウントを丸投げするような時代は終わりました。

当チームは完全に民間資金で運営している組織なので、政府から毎年予算がもらえるわけではありません。つまり当チームは20~25社のパートナー企業を抱えているのです。ですから私の仕事の一部は、ソーシャルメディアのアカウントを通じてパートナーに価値を提供し、共同ブランドコンテンツを作成してパートナー自体とその商品を紹介し、さらにファンやアスリート、ステークホルダー、そして当チームをオンラインでフォローしている人たちが見たい、関わりたいと思うようなコンテンツを提供することなのです。

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2021年におけるソーシャルメディア管理者のあり方についてお聞かせください。
もはやごく限られた人のための職種ではなく、それほど専門的な仕事でもありません。特に最近では、優れたマーケターであること、そしてPRに関する鋭い嗅覚が求められています。試合中はほぼカスタマーサービス担当者のように動く必要があり、関連性の高いアカウントやブランドに対してはコマーシャルチームの片腕となる必要があります。このように第一線で一般の人たちと関わり合う仕事がいくつも混在しているのですから、組織の中でも非常に複雑で興味深い役割です。

 

Twitterとの関係についてお話しいただけますか?
私の立場はウォッチャーそしてフォロワーであり、パブリッシャーではありません。自分が作ってきた中道左派的なスポーツ好きの小規模な仲間内で、夜な夜なおしゃべりに興じるだけで満足です。仕事が終わってから、自宅でスポーツ中継や『Love Island』(イギリス発のリアリティ番組)などを見るとき、Twitterも第二のスクリーンとして同時に使っていますが、他のソーシャルメディアチャンネルではこうはいきません。私にとってTwitterは家に持ち帰って楽しめる仕事かもしれません。

 

Twitterでは会話が非常に重要です。どの会話や返信に対して関わるのか、どのように決めていますか?
誰と何を話すか、というところから始めます。Team GBの大きな強みの1つとして、各イベントに送り出すチームの規模があります。東京オリンピックのときは373名のアスリートが選出されました。 多様性があり、幅広く、イギリスについて言えば、さまざまな地理的条件、人種、性的指向が混ざり合っています。イギリスを構成するすべての要素がTeam GBを構成しており、それが他にはない点です。しかし規模が大きいだけに、アスリートの動向を追いかけるのも非常に困難です。デジタル世界での行動はもちろん、大会での動きでさえ把握するのが難しいのです。

ほとんどの場合、私たちが語りかけたり話をしたりして会話に巻き込もうとする相手はアスリートです。大きなイベントでは、その会話にファンを巻き込みます。Team GBのファンはイベント好きで、大会にまつわる重要な出来事を楽しみます。国民がチームを応援し、大会に熱中すると、それはソーシャルメディアにも伝わります。そのため大会では、アスリートについてアスリートに語りかけるのではなく、あらゆることについてすべての人に語りかけるようにしています。そうすることで面白くて楽しい時間を作ることができます。

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Twitterアカウントの担当者として、さまざまな役割をどのように優先順位付けしていますか?
大会期間中かどうかによって異なります。 ブランドとしては、大半の時間「イベントモード」ではありません。そのため大会期間外は、オリンピックスポーツの声となることを優先し、成果やメダルの獲得を喜んだり、選手のストーリーや次の大きなイベントに向けてどのように準備しているかを紹介したりしています。これは他の誰も真似できない集合的なニュースフィードに近いもので、私たちの立場や、おそらくリーチのおかげでもあります。

大会期間中は様変わりします。特にTwitterでは、オリンピックのニュースを見る第一のスクリーンではなく第二のスクリーンになるよう努めます。これはテレビ、新聞、ラジオなど、あらゆるメディアで一斉に報道されるからです。 そんなときこそ創造性を発揮するチャンスです。第二のスクリーンになるのであれば、ニュースを伝えるためにそれほど努力する必要がないので、メダルについてもっと多角的に扱うことができます。また、アスリートとの連携やファンとの対話など、その他のコンテンツでも創造性を発揮できます。大会期間外はニュースの認知度向上に専念しようとするのでそういったことはできません。しかし大会期間中は自分たち自身がニュースになるのです。

 

簡単な質問と回答

 

親しみを込めて他のアカウントを茶化すことはありますか?
私たちは絶対にしません。別の業界なら面白いでしょうが、オリンピックの世界は少し違います。私たちはそれを踏まえて大局的に見るようにしています。各国の目指すところを尊重し、大会全体を盛り上げることが大切です。全面的に嫌いというわけではないのですが、この夏は、ポジティブであること、相手を尊重することに集中します。

 

複数のハッシュタグを付けることはありますか?
好きではありませんが、必要な場合もあります。

 

言葉を絵文字で代用することはありますか?
ありません。しかし言葉に付け加えて使うことは奨励されています。

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現在フォローすべきアカウントを教えてください。
もちろん、アスリートたちのフォローをすすめます。私たちはアスリートの声を集約したチームなので、Team GBをフォローしていただければと思います。東京大会に参加するアスリートのTwitter リストがあるので、選手たち自身のストーリーと東京大会までの道のりを発信してもらおうと思っています。

私個人としては、イングランド代表がFA(イングランドサッカー協会)でやっていることはすばらしいと思います。英国のスポーツチームのデジタルコンテンツとして、現時点で基準となっているのは、おそらくイングランド代表でしょう。デジタルが先頭に立って、これまでさんざん酷評されてきたサッカーチームに対する国民感情を一変させたのです。それまでの認識が完全に覆されました。その成功要因はデジタルコンテンツにあると思います。

 

インタビューの最後の質問になりました。下書きフォルダに残っているツイートがあれば教えてください。
個人的には下書きフォルダを使っていませんが、大会中に結果が出る、あるいはその可能性のあるメモや統計データをたくさん書き溜めておいて、それをツイートとして使っています。たとえば、今夏の代表チームには12歳のスケートボーダー、Sky Brown選手がいます。そしてケイリンのJason Kenny選手は、もしメダルを取ればイギリスのオリンピック選手として史上最多メダル保持者になります。Jason Kenney選手が初めてメダルを獲得したとき、Sky Brown選手はまだ生後1か月でしたが、東京オリンピックではこの2人が同じ日にメダルを獲得するかもしれないのです。そんな風に頭の中で考えたり、下書きとして書いたりしたものはファンによろこんでもらえるでしょう。

 

写真著作権者: David Pearce(2021年)

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